イタリアで荷物を盗まれたオレとヒゲの話
こんばんわ、ヴァンです。
朝起きたら荷物が全てなかった
"やられた"
そう直感したが
自然と慌てる事はなく
しばらく絶望感に浸かるため
近くの壁に寄り掛かった
"ベンチで寝てた自分が悪い"
"自業自得だから仕方ない"
諦めを付けるため自分にそう言い聞かせた
通勤の時間なのだろうか
うつ向いた視線の先を幾つも影が通る
『安いドラマだったら昨日バーで知り合ったブロンドのコが現れるんだけどな』
丁度そう呟いた時
1つの影がオレを覆った
"まさかっ"
顔を上げるとそこには
見た事のない
ヒゲもじゃの大男
ヒゲ『おい、ここで何してる!邪魔だぜ!』
既に怒ってる様子で
オレ『すみません』
と何度も謝った
ヒゲ『店の前でやつれた顔をされてちゃ営業妨害だぜ!自慢のピッツァが1枚も売れないぜ!』
オレ『貴方のお店だったんですか?』
ヒゲ『そうだぜ!お前が寄り掛かってるその壁も俺の物だぜ!』
オレ『すみません。ピッツァか・・・だからこんな美味しそうな匂いがしてたんだ』
ヒゲ『お前にこの匂いの良さわかるのか?俺のピッツァは匂いがウリだぜ!』
オレ『はい、元々イタリアにはピッツァを勉強するために来ましたから、でも荷物を全て盗まれちゃって・・・』
ヒゲ『命があっただけでも御の字だぜ!でもその様子だと腹が減ってるんじゃないのか?1枚ご馳走するぜ!』
オレ『いえいえ、そこまでしてもらうわけには・・・』
グゥ~(お腹の音)
ヒゲ『へへっ、決まりだぜ!』
こうしてそのままヒゲのピッツァ屋で働き出した
ヒゲの娘(ジェニー)にも気に入られ
昼はピッツァ、夜はジェニーを回した
モッツァレッラの香りが肌に合い
"このままイタリアで暮らしたい"
自然とそう思うようになっていた
充実した日々を過ごしていたが
ある日
頭を抱えてるヒゲの姿が
ヒゲ『オーマイガーだぜ!』
オレ『どうかしました?』
ヒゲ『大変な事になっちまったぜ!』
どうやら
3日後に行われる
"バイクに乗りながらピッツァ回し大会"
と
"隣町のストリッパーのロザンヌとの食事"
のダブルブッキングをしてしまったらしい
大会を棄権すると
1年間ピッツァ販売禁止、及び町長のグーパン
だが
妻に逃げられたヒゲとしてはロザンヌを
どうしても口説き落としたい
ヒゲ『・・・頼まれてくれるかい?』
オレ『ええ、喜んで』
今まで受けた恩をやっと返せる
そんなチャンスが訪れた事に感謝します
こうしてヒゲは
時速85kmでピッツァを回し、見事優勝!
オレもまた
ロザンヌをモーテルで激しく抱いた